Bracelet 制作日記

壊れたものほど、美しい理由|金継ぎクリソコラとピーターサイトの新作バングル

その傷、隠さなくていい

頑張り続けてきた自分に、ふと「これでよかったのだろうか」と問いかける瞬間はございませんか。
完璧を求められる毎日の中で、少し欠けていても、少し歪んでいてもそれが美しくて目を惹きつける。そう思わせてくれるものが、身の回りにひとつあると、美しさを見いだせた自分を誇らしく思います。

今回ご紹介する新作は、シルバージュエリーとしての存在感はもちろん、金継ぎジュエリーならではの物語性を纏った一点ものの天然石バングルです。

クリソコラを石留めしています

修復は、敗北ではない

OAKNOKIが大切にしているのは、繊細な美しさと、揺るぎない精神性が交わる場所です。
流行に合わせて何かを選んでもきっかけは自由で、自分が美しいと感じたものを、自分のためだけに身につける。自由に自分を愛する姿勢が、このブランドの軸になっております。

金継ぎ技法は、割れたものを隠さず、あえて金の線で美しくはり合わせる技です。傷を消すのではなく、傷そのものを美意識に変えてしまう。この発想には、どこかロックな精神性と近いものを感じます。また、シルバー製品は例え取り返しのつかない失敗をしてもまたシルバーとして固めて作り直すことができる。修復とは敗北ではなく、新たな価値の創造である――そんな毒っけのある美学を、シルバーの塊に込めました。

バングルを磨きあげます

幅広のシルバーバングルの土台には、鍛造という技法を用いております。
シルバーを一度溶かし、地金として固め、そこからローラーで少しずつ伸ばしていく。地金を作るだけで、優に4時間を要する工程です。型に流し込んで成形する方法とは異なり、金属を叩き、伸ばし、圧をかけ続けることで、内部の密度が高まり、粘り強く歪みにくい質感が生まれます。手間のかかる分だけ、削り出しでは出せない、静かな強さを帯びたフォルムに仕上がるのが、鍛造ならではの魅力です。

一枚のシルバーの塊が、時間と手作業を経てバングルへと姿を変えていく過程そのものが、このブランドの精神性と重なります。楽な方法を選ばず、自分の手で確かめながら形にしていく。
これほど幅の広いバングルは、地金を作る段階から難易度が高く、市場でもあまり見かけません。伸ばす過程で歪みや割れが生じやすく、均一な厚みを保つには相応の技術と時間を要するためです。手間のかかる工程を避けずに向き合った結果として、この存在感のある幅が生まれました。

バングルの縁も丁寧に丸みをだします。直線は残しながら、着用したときに心地よいように、線を見つめ全体を確認しながら手作業で削ります。
OAKNOKI のリングもそうですが、つけ心地がいいですね、と言っていただけることが多くて目に見えないこだわりポイントです。

縁もつけ心地が良いように整えます

表面は、あえて艶を抑えたマット仕上げに整えています。鏡面のような光沢は華やかさがある一方、日常の中では浮いてしまうことがございます。マットな質感であれば、オフィスでも、休日のラフな装いでも、肌になじむように馴染んでくれる。存在感のあるサイズでありながら、暮らしの中に静かに溶け込む佇まいを目指しました。

金継ぎクリソコラ、ピーターサイト

そうしてできた土台に、存在感のある大ぶりの天然石、金継ぎクリソコラとピーターサイトを配しました。
このクリソコラは、アメリカ・ツーソンから来た石です。石屋の方が、割れてしまった原石を見て、このままでは石が可哀想だという思いから、自ら金継ぎを施したのだと伺いました。
効率や採算だけでは動かない、石そのものへの情があったからこそ、この一石は今の表情を纏っています。静けさを湛えた青緑の中に、一度壊れ、そして誰かの手によって繋ぎ直されたという記憶が刻まれ、海を渡って私の手元に届き美しいバングルと生まれ変わりました。

石留め前のバングル

クリソコラは、銅を多く含む鉱物で、深い青緑のグラデーションが特徴です。古くから「コミュニケーションの石」「女性性を象徴する石」として扱われてきた歴史を持ち、内側に静けさと落ち着きをもたらすと言われています。マラカイトのような荒々しさとは異なり、水面のような透明感のある色合いが、知的な印象を強めてくれます。
ピーターサイトは、荒々しい模様がそのまま鉱物の生命力を物語る石です。植物的な柔らかさとは異なる、大地の奥から生まれた力強さがございます。
内部に走る繊維状の輝きは「タイガーアイ」と近い成り立ちを持ちながら、白濁した透明部分が儚いニュアンスを持っています。褐色・金・青が渦を巻くように交わり、一つとして同じ表情がありません。「嵐の石」とも呼ばれ、変化を恐れず前へ進む力を後押しすると言われています。荒れた地層がそのまま美へと転じたような佇まいは、構築的で無地なバングルのフォルムとよく馴染みます。無地の幅広フォルムのバングルに、この二石を合わせることで、マニッシュでありながらどこか儚さも漂うバランスに仕上げました。

ピーターサイトを石留めしています

手首に、静かな主張を

このバングルは、装いを大きく変えるものではございません。けれど、ふと視線が落ちたときに、確かな存在感を放ちます。
黒のレースの袖口からのぞかせても、素肌にひとつだけ重ねても、その表情は変わります。日常のミニマルな装いにアーキテクチュアルなアクセントを添えたいとき、あるいは自分へのご褒美として、特別な日に選んでいただきたい一本です。

幅広で存在感のあるフォルムながら、背面にチェーンを備えているため、手首から落ちる心配はございません。腕を動かす場面が多い日でも、安心して纏っていただけます。

自分のための一本を

完璧である必要はございません。むしろ、欠けた部分にこそ、その人だけの物語が宿ります。
金継ぎクリソコラとピーターサイトの新作バングルは、そんな揺るぎない自分でいたいと願う方に、静かに寄り添う一点です。誰かに見せるためではなく、自分自身が纏うことで満たされる。そんな時間を、ぜひ手首の上で味わっていただけましたら幸いです。

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